2025年の日本不動産市場の現状と展望

日本の住宅不動産市場の現状と展望 (2025年・2028年・2030年以降)

導入

日本の住宅不動産市場は近年、都市部を中心に価格上昇が続き、全国平均の地価公示価格は2022~2024年にかけて3年連続で上昇しました 。特に地方主要4市(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇率は一時、東京圏・大阪圏など三大都市圏を上回る勢いを見せています 。一方で超低金利政策が長く続いたことで住宅ローンの借りやすい環境が続いてきましたが、ここにきて日銀の金融政策転換が市場に影響を与え始めています。人口減少や高齢化による2025年問題(団塊世代が75歳以上となる節目 )が目前に迫り、空き家増加といった構造的な課題も顕在化しています。また、東京オリンピック後の再開発や2025年の大阪万博、さらにはスマートホームなど不動産テックの進化も市場動向に影響を及ぼしつつあります。本記事では、日本住宅不動産市場を短期(2025年)、中期(2028年)、長期(2030年以降)に分けて、価格予測や需要・供給の変化、政府政策、外国人投資の影響といったポイントを詳細に分析します。

公示価格と基準地価の変動率推移(単位:%)。全国平均では緩やかな上昇だが、地方主要4市(札幌・仙台・広島・福岡)は三大都市圏を上回る上昇率を示した。ただし地方4市の伸び率は前年より低下し、都市部の伸び率が逆に高まっている

短期展望(2025年)

住宅価格の動向(主要都市別): 2024年までの不動産市況を踏まえると、2025年の住宅価格も都市部を中心に高値圏で推移すると予想されます。東京圏の中古マンション平均成約価格は2022年度に4,343万円と前年比10%も上昇し 、コロナ禍以降で大幅な値上がりを記録しました。また2024年秋時点でも、東京23区など都心部では再開発の進展もあって高値を維持するエリアが見られます 。もっとも、価格高騰による成約件数減少や在庫増加の兆候も出ており、首都圏では2024年後半に中古マンション価格が前年割れとなるなど、一部で調整局面も見られます 。大阪では、2025年の大阪・関西万博や日本初の統合型リゾート(IR)開発への期待感から住宅市場が活況で、高級住宅プロジェクトの進行やインバウンド需要の急増も相まって価格は過去最高値を更新しています 。実際、大阪市内の新築マンション平均価格は前年から大幅上昇しており(2023年時点で前年比40%以上の上昇というデータもあります)、万博開催による経済効果で堅調さが続く見通しです 。福岡など地方主要都市も人口流入や企業進出で需要が高く、2024年の地価上昇率は三大都市圏を上回る伸びを示しました 。福岡市では近年、大型再開発や商業施設開業が相次ぎ、住宅地・商業地ともに地価上昇率全国トップクラスを記録しています。短期的には地方都市も高い伸びを維持するものの、東京圏などとの格差拡大には注意が必要です 。

住宅ローン金利の見通しと購入者への影響: 2024年に日銀がついにマイナス金利政策を解除し、約17年ぶりに政策金利を引き上げました 。これに伴い、市中の長期金利も上昇傾向となり、2025年前後には住宅ローン金利(特に固定金利型)の緩やかな上昇が見込まれます。多くのエコノミストは、今後の日本の金利について**「緩やかな上昇」を予想しており 、変動金利型ローンも各金融機関で2024年末頃からじわじわと上昇し始めています 。例えば大手行の変動型最優遇金利も底を打って上昇に転じており、月々の返済負担増によって一部の購入希望者が様子見に回る可能性があります。金利上昇は借入可能額の目減りを意味するため、特に予算ギリギリで新築物件購入を検討していた若年層にとっては需要抑制要因となるでしょう 。その結果、「手の届きやすい既存住宅」(中古住宅)に注目が集まる可能性があります。実際、建築コスト高騰や省エネ基準強化で新築価格が上昇する中、住宅ローン金利上昇も相まって、新築需要が伸び悩むとの見方があります 。2025年は住宅市場の転換点となりうる年であり、購入希望者は固定金利への借り換え検討や頭金増額など金利リスクへの備えが重要です。また、不確実な局面では「予算内で無理なく返済できる物件を選ぶ」**慎重さが求められます。

政府の住宅関連政策(減税・補助金・規制): 短期的に市場へ影響を与える政策として注目なのが、住宅ローン減税の動向です。現在の住宅ローン減税制度(住宅借入金等特別控除)は2025年までの時限措置となっており、これを延長するかどうかが注目されています 。減税措置の延長・拡充は住宅購入を後押しするため、政府は景気や税収状況を見極めつつ判断する見込みです。また、省エネルギー住宅の普及促進も政策の柱です。2025年度から新築住宅への省エネ基準適合が義務化されることが決定しており 、高効率設備の導入や断熱性能向上などを行う建築主に対する補助金制度が用意されています。これにより新築コストは上昇しますが、長期的な光熱費削減メリットを前面にZEH住宅(ネットゼロエネルギー住宅)の普及を図る考えです 。他にも、若年子育て世帯・高齢者世帯の住宅取得支援策として、地方移住者への補助金や親から子への住宅資金贈与非課税枠の延長などが講じられています。規制面では、2023年に空き家対策特別措置法の改正が成立し、管理不全な空き家にも固定資産税優遇の解除や行政代執行による除却命令がかけられることになりました 。これは増え続ける空き家問題に歯止めをかけるための措置で、2025年以降は自治体が悪質な放置空き家に対し厳しく対処できるようになります。総じて政府は、住宅市場の健全化と長寿命・省エネ住宅の推進、そして空き家抑制に向けた政策を進めており、減税と規制の両面から住宅市場をコントロールしていく方針です。

住宅需要の変化(若年層 vs. 高齢層、都市部 vs. 地方): 短期的な需要動向を見ると、若年層と高齢層でニーズに違いが現れています。20~30代の若年層では、リモートワークの定着や将来の収入不安などから**「背伸びをした住宅購入は避けたい」という傾向が強まっています。このため、都心のマンション価格高騰を受けて郊外で手頃な中古戸建てを探したり、賃貸で様子を見たりするケースが目立ちます。一方、60代以上の高齢層では、老後を見据えて利便性の高い都心部のマンションへの住み替えニーズが高まりつつあります。郊外の持ち家を売却・処分し、駅近のバリアフリー対応マンションやシニア向け分譲地へ転居する動きもみられ、高齢単身世帯の都心回帰が進んでいます。また、都市部 vs. 地方の観点では、コロナ禍で注目された地方移住ブームは落ち着いたものの、一部リモートワーカーや子育て世帯による地方転居は引き続きあります。地方圏では移住者受け入れのための空き家バンク活用や補助金制度が整備され、人気の高い地域(例えば長野県や福岡県など)では適度に住宅需要を下支えしています。しかし日本全体で見れば、依然として「人口は都市圏へ集中」の流れが基本であり、東京圏では人口流入による住宅需要が底堅く推移しています。実際、首都圏の賃貸市場は堅調で、東京23区の平均賃料は2025年時点でシングル向け月約10.6万円(前年比11.5%増)、ファミリー向け約22.3万円(同13.1%増)と過去最高水準を更新しています 。このように都市部では賃貸需要も旺盛で、「賃貸 vs. 購入」**の判断に悩む層も少なくありません。金利上昇局面では無理に購入に踏み切らず賃貸を選ぶ動きも考えられ、短期的には住宅購入需要の伸びがやや鈍化し、代わりに賃貸マーケットが活況を呈する可能性があります。

中期展望(2028年)

東京オリンピック後の不動産市場の変化: 2021年の東京オリンピック・パラリンピック開催は、首都圏で大規模な再開発やインフラ整備を促し、一時的に不動産市場を活気づけました。その後、市場はオリンピック特需の反動で落ち着くとの見方もありましたが、実際にはコロナ禍やリモートワーク普及といった新たな要因が絡み合い、価格推移は一様ではありません 。大会後しばらくは都心部のマンション価格が下落に転じたエリアもあった一方、都心の再開発地域などでは高止まりを維持する地域も見られました 。総じて言えば、五輪開催前に過熱していた首都圏の不動産市場はその後緩やかな調整局面を迎えつつも、新規供給が限定される都心・人気エリアでは依然として値崩れしにくい状況です。2028年前後になると、オリンピックの直接的な影響は薄れ、市場は人口動態や経済状況といった基礎的要因に左右される段階へ移行します。再開発が一巡した東京では、中古物件の流通やリノベーション需要が高まり、価値の維持・向上が図られるでしょう。逆に五輪を契機に整備された施設やインフラを抱えるエリアでは、そのレガシー効果をいかに維持するかが課題となります。不動産価格の中期的な予測として、首都圏全体では横ばい圏か緩やかな下落基調との見方が多いですが、都心の一等地や利便性の高い地域は需給タイトな状況が続き、大幅な下落は起こりにくいと考えられます。一方、オリンピック後に注目された大阪や福岡など地方主要都市は、自地域の成長ストーリーに沿った独自の動きを見せるでしょう。特に大阪は万博開催(2025年)後、その跡地利活用やIR開業といったポスト万博戦略が不動産市場に影響してきます。福岡や札幌も地元経済の活性化策次第では、東京一極集中の受け皿として引き続き堅調さを維持する可能性があります。

外国人投資の推移(中国・東南アジア・欧米からの投資動向): 中期的な日本の不動産市場において、外国人投資マネーの動向は重要な要素です。近年、日本の不動産は**「円安による割安感」や「安定した利回り」から海外投資家の注目を集めています 。特に中国をはじめとするアジアの富裕層からは、日本の住宅不動産市場に対する熱視線が送られており、中には日本の宅地建物取引士資格を取得してまで積極的に参入しようとする動きも見られるほどです 。中国資本による都市部マンション購入や一棟ビル投資は引き続き旺盛であり、東京や大阪の高級マンションが中国人富裕層によって現金一括購入されるケースも報じられています。また、シンガポールや香港など東南アジア華人系の投資も増加傾向にあり、日本市場を資産保全の受け皿として捉える動きが顕著です。加えて、欧米の不動産ファンドやREITも低金利で安定した日本市場を魅力的と見ており、ホテルや物流施設、オフィスビルへの大型投資案件が相次いでいます。例えばホテル分野**では、インバウンド需要の急回復も背景に、外国人投資家による日本のホテル投資額が2023年8月時点で20億ドルに達し、すでに前年(2022年)の14億ドルを大きく上回りました 。こうした海外マネーの流入は、日本の不動産市場全体の流動性と活性度を高めています。ただし、中期的には各国の経済情勢や金利動向によって潮流が変わるリスクもあります。例えば、中国本国の不動産市況悪化や資本規制強化があれば中国人投資は鈍化し得ますし、逆に欧米金利が下がれば海外ファンドの日本回帰がさらに進むでしょう。政府は安全保障上重要な土地取引に関する新法(2022年施行の重要土地調査規制法)で一部外国資本の動きをモニタリングしていますが、基本的に日本の不動産市場は今後も海外投資家に開かれた状態が続く見通しです。2028年頃までには、外国人による不動産取得が首都圏・地方を問わず市場価格を底支えする一方で、地域によっては地元住民との利害調整や透明性確保が課題となる可能性があります。

賃貸 vs. 購入のトレンド: 中期的な住宅需要を見ると、「賃貸派」と「購入派」の選好変化にも注目が必要です。超低金利時代には「家賃を払うよりローンを払って持ち家を」という意識が強かった日本ですが、金利上昇や住宅価格高騰を受けて、その方程式が揺らぎ始めています。都市部では賃料上昇が続いているものの(東京23区の賃料は前年比で二桁上昇 )、それでもなお数千万円の住宅ローンを組むよりリスクが少ないと感じ、賃貸を選択する若年層も増えています。この背景には、将来的な転勤・転職の可能性や、結婚しない・子供を持たない人生設計をする人の増加もあります。2030年頃には日本の世帯の約4割が単身世帯になると予測され 、特に高齢単身者や未婚の若年単身者が増える見込みです。単身世帯では持ち家志向が低めな傾向があるため、中期的には持ち家率の緩やかな低下が続く可能性があります。一方で、家族世帯にとってはマイホーム志向が依然根強く、郊外や地方の手頃な新築建売住宅の人気は根強いものがあります。つまり、日本全体として**「都心部=賃貸志向、郊外・地方=持ち家志向」**という二極化が進む可能性があります。このトレンドは不動産会社のビジネスにも影響を与え、都市部では賃貸管理やリート向け物件開発が伸び、地方では注文住宅や中古リノベーション販売が重視されるでしょう。賃貸と購入のどちらが得かは市場環境次第ですが、金利や税制、将来の不確実性を考慮して柔軟に住まい方を選ぶ時代になってきています。

日本の人口減少と住宅市場への影響: 2020年代後半から顕在化する最大の構造要因は、人口減少と少子高齢化です。日本の総人口は緩やかに減り続けていますが、実は総世帯数は2030年頃までは微増傾向にあります(世帯規模の縮小により世帯数が増えるため)  。しかし国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、世帯数も2023年をピークに減少に転じる見通しで 、2028年には人口減に住宅需要減少が徐々に追いついてくるタイミングとなります。これにより、日本住宅不動産市場には需給環境の大きな転換が訪れます。まず、地方や郊外から需要が細る地域では住宅在庫のだぶつきが顕在化し、不動産価格の下落圧力となるでしょう。一方で人口が集中する東京圏など都市部でも、高齢化によって毎年一定数の住宅が相続放棄や売却により市場に放出されます。特に「団塊の世代」が後期高齢者となる2025年以降、10~15年のスパンで大量の持ち家が子世代へ引き継がれる時期に差し掛かります。子世代が既に住宅を持っていたり地方在住だったりするケースでは、親世代の家が空き家となり売却や賃貸に出されることになります。そのため、2020年代後半から2030年代にかけて空き家が急増する可能性が指摘されています。実際、ある試算ではこのまま対策が進まない場合、2033年には全国の空き家数が約2,167万戸、空き家率は30.4%にも達すると予測されています (2018年時点13.6%から倍増)。こうした人口・世帯構造の変化は、住宅市場に地域ごとの明暗をもたらします。需要が縮小するエリアでは地価下落や空き家増加といった負の側面が強まる一方、都心の人気エリアや利便性の高い地域では希少性が増し不動産価値が相対的に維持される傾向が強まるでしょう。この傾向はすでに現れ始めており、東京都心の一部高級住宅街では富裕層や外国人に支えられて不動産価格が堅調な一方、人口減少が著しい郊外ニュータウンでは空き家率が高まり資産価値が伸び悩んでいます。例えば、明治大学の野澤教授の分析によると、東京圏の大型団地でも高齢化と世代交代の停滞により、2030年には1都3県で少なくとも138ヶ所の住宅団地で**「5戸に1戸以上が空き家」という状況に陥る可能性があると指摘されています 。このように地域間格差・不動産価値の二極化**が中期的に進行する見込みであり、人口減少時代における市場トレンドとして注目されます。

長期展望(2030年以降)

日本の住宅市場の将来的な課題(空き家問題、持続可能な都市計画): 2030年以降、日本の住宅不動産市場が直面する最大の課題の一つが空き家問題です。総務省の住宅・土地統計調査によれば、2023年時点で全国の空き家数は900万戸(空き家率13.8%)に達し、戸数・率ともに過去最高となっています 。この空き家の中には、賃貸や売却用に出されているものだけでなく、老朽化や相続放棄で放置された管理不全空き家が相当数含まれます。放置空き家は景観悪化や防災・防犯上のリスクとなるため、政府・自治体は対策を強化しており、2023年末施行の空き家法改正では行政がこうした空き家への介入をよりしやすくなりました 。しかし根本的な解決には至っておらず、2030年代には大量発生する空き家への対応(除却・活用・流通促進)が不動産市場の安定に不可欠となるでしょう。加えて、長期的な都市計画の視点では、人口減少社会に適合した持続可能な街づくりが求められます。国土交通省はコンパクトシティ政策を推進しており、公共交通沿線などに居住と業務を集約してインフラ維持コストを抑える取り組みが各地で始まっています。具体的には、行政サービスや商業施設を集約する都市拠点への居住誘導、郊外の老朽住宅地の再編(再開発や集約移転の促進)、防災力強化を兼ねた立地適正化計画の策定などが進められています。郊外の広大な戸建て分譲地では、区画統合や再整備によって新たな需要喚起を狙うプロジェクトも今後増えるでしょう。もう一つの課題は、既存住宅ストックの質向上です。日本の住宅は欧米に比べ平均寿命が短いと言われますが、空き家増加を抑えるには一戸一戸の住宅を長持ちさせ、有効活用することが重要です。2030年以降、築40年超の住宅が飛躍的に増える中、リフォーム・リノベーション産業の役割が高まり、耐震改修や省エネ改修、バリアフリー化によって古い住宅に新たな価値を与える動きが拡大すると期待されます。持続可能な住宅市場には、空き家を減らしつつ良質な住宅を次世代へ継承していく仕組み作りが不可欠であり、官民挙げての創意工夫が求められるでしょう。

住宅価格の長期的な予測と投資戦略: 住宅価格の長期予測は不確実性が高いものの、人口減少・世帯減少という大きな下押し要因がある以上、日本全体の住宅価格は緩やかな下落基調に入る可能性が指摘されています。実需が細る地方や郊外では、需給バランスの悪化から価格下落・地価下落が避けられない地域も出てくるでしょう。一方で、東京23区中心部や大阪都心部など、経済活動が集中し続けるエリアの不動産は引き続き高い需要に支えられることが予想され、値崩れしにくいと考えられます。したがって、長期的には**「不動産の価値は立地次第」という傾向がさらに鮮明になります。投資戦略としては、成長が見込めるエリアや資産価値が落ちにくい優良立地への選別投資が重要です。具体的には、都市再開発が予定されている地域の物件や、駅直結・再開発タワーマンション、将来の需要が堅いコンパクトシティの中心市街地物件などが長期投資に向くでしょう。また、地方でも政令指定都市や観光地など「選ばれる街」では底堅い需要が残るため、割安な物件を長期保有して賃貸収入を得る戦略も有効かもしれません。逆に、人口流出が著しい地域の物件や、将来的に維持管理が困難になりそうな郊外戸建ては、資産価値の目減りリスクが高く注意が必要です。長期的な不動産投資では、短期的な景気変動に一喜一憂せず、「長期安定収益を生むか」「将来の需要が見込めるか」**という視点で物件を吟味すべきとされています 。また、出口戦略も視野に入れ、将来売却しやすい流動性の高い資産を選ぶことも重要です。不動産は長期運用に適した資産と言われますが、それゆえに人口動態や地域の将来像まで見据えた上で、綿密な市場分析とデューデリジェンスを行うことが投資家には求められます。

不動産テックの進化(スマートホーム、AI活用の不動産市場): 2030年に向けて、テクノロジーの進化が住宅不動産市場を大きく変革すると考えられます 。まず住宅そのものでは、IoTを活用したスマートホーム技術が一般化し、家電や照明・空調を遠隔制御できる住宅が当たり前になるでしょう。センサーによるエネルギー管理や、防犯カメラ・顔認証によるセキュリティ強化など、テクノロジーが生活の質を高める住宅が増加します。また政府が推進するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は2030年以降新築住宅への義務化が計画されており 、創エネ・省エネ設備を備えた持続可能な住宅が市場の主流となっていきます。加えて、不動産ビジネスの領域ではAI(人工知能)の活用が一段と進むでしょう。2020年代前半時点でも、不動産企業の60%以上が何らかのAI技術を導入し始めています 。具体例としては、AIによる物件価格査定や需要予測、契約書チェックの自動化、顧客問い合わせ対応のチャットボットなどが既に利用されています。2030年頃には、過去の膨大な取引データや周辺環境データを機械学習したAIが不動産価格の将来予測を高精度で行ったり、買い手と売り手のマッチングを最適化したりするサービスが一般化するかもしれません。ブロックチェーン技術による不動産取引の透明化・迅速化も期待され、契約や登記のプロセスが効率化・安全化するでしょう。こうした不動産テック(PropTech)の進展により、従来はアナログ色が強かった不動産業界も大きく様変わりすると考えられます。消費者にとっては、VR内見やオンライン契約、AIアドバイスによって自宅にいながら最適な物件選びができるようになり、より便利で納得感のある住宅購入・賃貸が可能となります。長期的にはテクノロジー活用が市場の非効率を是正し、中古住宅流通の活発化や空き家活用のマッチング促進などプラスの効果が期待できます。不動産テックの進化は、日本の住宅市場を持続可能な形で支える重要な要素となっていくでしょう。

持続可能な住宅政策と政府の対策: 将来に向けた住宅政策として、政府はサステナビリティと安心をキーワードに据えています。前述の省エネ住宅義務化や空き家対策強化に加えて、住宅セーフティネットの構築も重要です。高齢者や低所得者が安心して住まいを確保できるよう、公的賃貸住宅や住宅手当制度の充実、空き家を活用した社会的住宅の提供などが検討されています。また、災害大国である日本においては住宅の耐震・防災性能の向上も長期政策課題です。既存住宅への耐震改修補助や、災害リスクが高い地域からの移転支援(防災集団移転促進事業)などを引き続き推進し、災害に強い街づくりを進める必要があります。さらにカーボンニュートラル実現に向け、住宅分野からのCO2排出削減も求められています。2030年までに新築住宅の平均でZEH実現を目指すほか 、住宅・建築物の省エネ基準適合率を引き上げる政策目標が掲げられています。太陽光発電パネルの設置義務化(東京都では新築戸建へのパネル設置義務が2025年度から開始)といった地域主導の取り組みも広がりそうです。このように政府は、エコで強靭、そして空き家だらけにならない住宅社会を目指し、多方面から対策を講じていくでしょう。長期的な視点では、人口減少下でも住宅市場を安定的に維持し、国民に良質な住環境を提供し続けるための制度設計が求められます。

結論

2025年から2030年以降にかけて、日本の住宅不動産市場は大きな転換期を迎えると考えられます。短期的には低金利時代の終焉に伴う市場の揺り戻しや、2025年問題と呼ばれる高齢化の波が押し寄せ、住宅需要の構造転換が進むでしょう。中期にはオリンピック後の新常態や外国人投資マネーの影響を受けつつ、地域ごとの格差が拡大する可能性があります。長期的には人口減少という不可避の現実の中で、空き家対策や省エネ転換など持続可能性を確保する取り組みが市場の安定に不可欠となります。

こうした環境下で投資家へのアドバイスを挙げるなら、まず第一に長期的視野を持つことが重要です。不動産は短期売買で利益を上げるより、中長期で安定収益を得る資産と位置付け、短期的な価格変動に一喜一憂しないことが肝要です 。特にこれから人口減少が本格化する日本では、物件選びにおいて「立地の選別」がこれまで以上に重要になります。今後の日本の不動産トレンドを踏まえれば、値崩れしにくい都心・駅近物件や需要の底堅いエリアへの投資が安全策となるでしょう。一方で地方にも目を向ければ、割安で高利回りの物件が見つかるチャンスもあります。不動産投資は分散が効きにくい面もありますが、都市部と地方、住宅と他用途などポートフォリオを工夫することでリスクを抑えることができます。また、空き家問題は裏を返せば**「掘り出し物件の宝庫」**とも言えます。適切なリノベーションを施し需要に合った賃貸や販売を行えば、社会課題の解決に貢献しつつリターンを得ることも可能でしょう。

総じて、日本の住宅不動産市場は急激なバブル崩壊のリスクは小さいものの、緩やかな変化の中に潜在的なリスクと機会が混在しています。戦後最大級の人口減少期を迎える中でも、市場は政府の政策支援や技術革新、そして都市の魅力によって一定の安定性を保つと期待されます。他国と比べ安定性が高いとも言われる日本の不動産市場ですが、それでもなお将来予測には不確実な要素が多分にあります。投資家・消費者それぞれが最新の動向にアンテナを張りつつ、自身の目的に合った不動産戦略を描くことが大切です。不透明な時代だからこそ、しっかりと情報収集と分析を行い、長期的な視点で計画を立てることで、日本住宅不動産市場での成功と安心を手にできるでしょう。

  1. https://www.idealista.jp/news/2025-nen-nihon-fudosan-shijo-genjo-to-tenbo
  2. https://www.immobiliare.co.jp/2025-fudosan-shijo-no-yosoku
  3. https://www.casain24.jp/nihon-fudosan-2025-tenbo
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